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第三章・4

 ヴァフィラの千々に乱れる思いとはうらはらに、日常はただ平穏に過ぎる。  礼拝で顔を合わせても、ルドーニはいつものルドーニだ。  軽口をたたき、おどけ、たまに仕事の話を交わす。ただそれだけだ。  あの真剣な表情は何なのだろう。  そんな思いが心の奥に再びしまい込まれてゆく少し前に、ヴァフィラは他人の口からルドーニの名を聞いた。 「ルドーニのやつ、最近おかしいよな」 「お前もそう思うか」  神殿の中庭にしつらえられたベンチに腰かけた、数名の武官たち。  知った顔だ。  よくルドーニと共にいるところを見かける顔ぶれだった。 「昨夜一緒だったんだけどさ、気が付くと先に帰ってたよ。あいつ」 「朝帰りじゃあないのかよ」 「相手はひとり。しかも1時間くらいで切り上げたみたいだぜ?」 「あの女好きがか!」  話の内容から察するに、どうやらルドーニは昨夜妓館に行ったらしい。  彼の遊び方が派手なのはヴァフィラも耳にしたことがある。  夜通し相手をとっかえひっかえしながら、朝まで居続けるとかいないとか。

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