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第三章・6

「特効薬はあるけどな」 (特効薬!?)  目を輝かせて、ヴァフィラは聞き耳を立てた。  忙しい事だ。 (その特効薬とやらを手に入れて、ルドーニの病を治してやらねば)  ヴァフィラは、注意深く武官たちの様子をうかがった。  どいつもこいつも、ルドーニが不治の病と知っていながらニヤニヤ笑っている。  なんて友達がいのない連中だ。  彼には、ちゃんと友人は選ぶように言ってやらねば。 「特効薬は」 (特効薬は!?) 「ヴァフィラだな」 (私!?)  私が薬になるとは!?   一体全体どういうことだろうか!?  ヴァフィラの頭は、混乱を極めた。  考えても考えても解からない。  だが武官たちは口々に、違いない、などと笑い合いながらその場を去って行った。  後に残されたのは、ヴァフィラただひとり。  ルドーニが、不治の病。  しかも、特効薬はこの私。  まるで永遠に解けないなぞなぞだ。  だが、ルドーニが病気だということだけは確かなのだ。  ヴァフィラはうなだれて、とぼとぼと歩き始めた。

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