38 / 459
第三章・9
「お前が病気だと聞いた」
「へ?」
「とぼけるな。不治の病だと聞いたんだ」
言葉にすると、あろうことか涙までにじんできた。
ルドーニ。死んでは駄目だ。死なないで。
私を一人ぼっちにしないでくれ。
彼を失う事を考えると、絶望的な喪失感が襲ってくる。
ヴァフィラは激しく首を振ってその恐怖を振り払った。
「よく解からないが、特効薬は私ということらしい。私はどうすればいいのだ? 言ってくれ。お前がそれで治るなら、何だってするから」
「ちょッ、ちょっと待ってくれ、ヴァフィラ。一体全体、どこからそんな話が!?」
「グラフコスたちが、そう言っていた」
ルドーニは、ふざけた悪友たちの顔を思い浮かべた。
あの野郎、何てこと言いやがる。
何を話していたかの想像はつく。
人を肴に笑いやがって、今度会ったらただじゃおかねえ。
だが、言っていることはあながち間違いではないのだ。
いや、そのものずばり言い当てているのだ。
大きなため息が出る。
ともだちにシェアしよう!