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第三章・12
そう。
初めは墜としてみせる勢いで近づいたはずだった。
だが、その美しい体に宿る清らかな精神は、深く付き合えば付き合うほど大切なものになっていった。
簡単に手折ってしまえるものではなくなった。
「さぁ、話は終わりだ。寝室で休みな」
ヴァフィラがそれ以上反論してこない事を一呼吸おいて確かめると、ルドーニは立ち上がりテーブルへと引き返そうとした。
だが。
服の裾を引っ張る小さな力に、思わず立ち止まった。
「ヴァフィラ?」
「……一緒に」
小さな声で、だがはっきりとヴァフィラはそう言った。
ルドーニは耳を疑った。
一緒に、とは!?
それきりヴァフィラは何も言わない。
耳まで真っ赤に染め、うつむいている。
ルドーニはヴァフィラの体に手を添え、そっと立たせた。
ヴァフィラの手は、まだルドーニの服の裾をつかんでいる。
肩を抱くようにして、ゆっくり寝室へと足を向けて見る。
いざなわれるまま、ヴァフィラはルドーニと並んで扉の奥へと歩を進めた。
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