56 / 459
第三章・27
一夜を共にしても、ルドーニは人前では何事もなかったかのようにヴァフィラに接してきた。
相変わらず軽口をたたき、おどけ、たまに仕事の話を交わす。
それでも、ヴァフィラの胸の内にはひとつ、新しい気持ちが芽生えていた。
これからふたりで、その芽を大切に大切に育ててゆくのだ。
足取りも軽くなる。
ルドーニが病気だと聞いて落ち込んでいた気分が嘘のようだ。
そんなある日、ヴァフィラは他人の口からルドーニの名を聞いた。
「ルドーニのやつ、最近絶好調だよな」
「お前もそう思うか」
神殿の中庭にしつらえられたベンチに腰かけた、数名の武官たち。
知った顔だ。
よくルドーニと共にいるところを見かける顔ぶれだった。
ふふん、とヴァフィラは柱の陰で小さく胸を張った。
絶好調。
それはそうだろう。
何たって、この特効薬の私が彼を癒したのだから。
ともだちにシェアしよう!