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第四章・12

「ちょっと、熱っぽい?」  ルドーニはそう尋ね、額から手を離そうとした。しかし、ヴァフィラがその手を取り自分の頬に当て、顔を摺り寄せてきたのだ。 「どッ、どうしたの? ヴァフィちゃん?」  はぁ、と漏らされる熱い吐息。  うるんだ眼。  これはもしかして、とルドーニは生唾を飲んだ。  発情、してんのか!?  ヴァフィラの唇が、ルドーニの手に押し当てられた。  ちろり、と舌が覗き、唾液の感触が伝わってくる。 「ヴァフィラ。俺の事、欲しい?」  にやけたルドーニの声に、ヴァフィラは我に返った。  慌てて手を振り払い、ばっとそっぽを向いてしまう。 「妙な事を言うな。いやらしい!」  ふうん、とルドーニは長い脚を組み直し、身を乗り出した。 「しばらく、会えなくなると思う」 「え?」  円い眼をして、ヴァフィラが向き直った。 「ライファの報告にもよるだろうが、ヴーヴェスの陣、女王は何とか立て直す腹でいるらしい。となると、闇魔法の瘴気をまず取っ払う事が先決だ。それは、俺にしかできねえ。近々、ヴーヴェスへ行く事になるだろう」

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