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第四章・13

「あ……」  短い言葉を発し、それきり黙ってしまったヴァフィラを、ルドーニは見つめた。  もじもじとせわしなく体を揺すり、ちらりとこちらを見ては眼を逸らす。  そんな事を繰り返すヴァフィラ。  可愛くてたまらない。  すぐにでも抱き寄せて、むしゃぶりついてしまいたいところだが、ルドーニはわざと意地悪く話を伸ばした。 「まぁ、出立の準備もあるし、何かと忙しくなる。多分明日くらいから、もう二人きりにはなれねえなぁ」 「そっ、そうか。大変だな」  髪を指に絡ませ、くるくると回すヴァフィラ。 「まずは一個小隊くらい連れてって、様子を見るか。場合によっちゃあ、援軍頼むかな」 「それがいいだろう。うん」  耳たぶをつまみ、ゆっくりと揉むヴァフィラ。 「あ、遺体がまだ転がってるって話だったなぁ。連れて帰るわけにもいかねえし、ヴーヴェスにそのまま埋葬するかな」 「そうしてやるといい。丁重に弔ってやってくれ」  手を拡げ、指の間をこするヴァフィラ。  愛おしさとともに、笑いまでこみあげてくる。 「ヴァフィちゃ~ん、こんな時くらい素直になったら?」  ルドーニは、ようやくヴァフィラにそう切り出した。

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