72 / 459

第四章・14

 こんな時くらい素直に?   ヴァフィラは、ルドーニの言葉を頭の中で繰り返した。 「やりたいんだろ? 体、疼いてたまんないんだろ?」 「わッ、私は別に!」  むきになって喰ってかかったヴァフィラだったが、ルドーニの言うとおりだ。  身も心も、もう我慢できないところまで来てしまっている。 「別に? そっか。じゃあ、いいんだな? 俺、このまま帰っても。しばらく会えなくなるんだぜ? それまで、我慢できる?」  こぶしを握り、小さく震えているヴァフィラ。  さすがにこれ以上いじめるのはかわいそうだ。  そう思いかけた時、ヴァフィラが長椅子のルドーニの横に腰かけてきた。  ぎこちなく体を摺り寄せ、密着してくる。 「どうしてほしい?」  そんなヴァフィラの瞳を覗き込みながら、ルドーニは優しく問うた。 「……キスを」  ヴァフィラの言葉に応え、ルドーニはそっと唇を重ねた。

ともだちにシェアしよう!