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第四章・21
翌朝、ヴァフィラが目を覚ますと、すでにルドーニの姿はなかった。
ぼんやりとしていた思考に、焦点があってくる。
は、と正気に返ると、ヴァフィラはがばりと寝具に顔を伏せた。
わッ私は、何てはしたない事を!
昨夜の淫らな自分を思い返すと、恥ずかしくて恥ずかしくていたたまれない。
ルドーニが隣にいないことが幸いだ。
いたら何と言ってからかわれるかしれない。
だが、その顔が胸に浮かぶと、ふと明け方のルドーニの言葉が思い出された。
『素敵だったよ、ヴァフィラ』
優しい言葉だった。
そしておそらく、今ここに居ないのは彼なりの思いやり。
乱れきった姿をさらした私が恥を感じないように、との配慮に違いない。
「ルドーニ」
その名を、つぶやいてみる。
体は、もう疼かない。
代わりに、温かな思いが胸を浸してくる。
どうか無事に、ヴーヴェスから帰ってきてくれ。
柔らかな朝日に、ヴァフィラは静かに祈った。
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