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第五章・2

 だが、次第にその微笑が曇ってきた。  部隊の最後の班が到着しても、ルドーニの姿が見えないのだ。  ごったがえする兵士たちの中に、ひときわ目立つ鶏冠の兜を被った男を見つけ、ヴァフィラは思いきって声をかけた。 「見たところ、この班の長を務めるものかと思うが」 「は? あ、はいッ! 何でありましょうか!」  サロランニでも随一の美しさを誇る、カラドの魔闘士・ヴァフィラの顔と名を知らない者はいない。  かの人に声をかけられるという誉に、班長兵は愛してはいるがすでにとうの立った妻の手を慌てて振りほどき、背筋を伸ばして応対してきた。 「その、何だ。奴の姿が見えないようだが」 「ヤツ、とおっしゃいますと?」 「ん? うん。責任者、というかなんというか」  そこで班長兵は、ぽんと両手を打った。  同じカラドの魔闘士・ルドーニの帰還を待っていたに違いない、と素直に受け取り、キリリと引き締まった面持ちでヴァフィラに朗々と報告を始めた。 「カラドの魔闘士・ルドーニ様は、ヴーヴェスへ交代に参じた第二部隊との引継ぎの後、しんがりを務めてくださっております! 我々が、卑劣な敵兵に背後を突かれることのないようとのご配慮、身にあまる光栄であります!」

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