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第五章・4
時々窓を開けて部屋に風を通してくれないか、と渡された合鍵。
時々どころか、ほとんど毎日通った。
帰るはずのない主のテーブルへ花を活けて見たり、寝室のシーツを取り換えてみたり。
誰かの帰りを待つ、という事は、心を半分に分かつものだという事をヴァフィラは知った。
期待と落胆。
今日こそは、帰ってくるかも。
今日もまた、帰ってこなかった。
そして再び、落胆に終わるのか。
だが、かすかな期待を捨てきれず、ヴァフィラは冷たい湧水を汲んできてルドーニの好きなワインを冷やして待った。
待って、待って、待ちくたびれて、いつしかテーブルに突っ伏してうとうとしていたところに、ふわりと夜風が訪れ頬を撫でた。
顔を上げると、扉が大きく開かれ背の高い人影が立っていた。
月の逆光で顔が見えない。
だが、見なくても解かる。
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