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第五章・6
へへっ、と、ルドーニが笑って身じろいだ。
そっと体を離し、きょろんとした眼を片方つむっておどけた声をあげた。
「愛してるぜ、ヴァフィラ♪」
冗談めかして、ようやく口にした言葉。
この雰囲気で真面目に言うと、これまで張りつめていた心が一気に崩れてしまいそうだ。
そのままヴァフィラを石の床に押し倒してしまいそうだ。
荒んだヴーヴェスの空気を、まだその身にまとったままなのだ。
ルドーニは冗談を交えることで、必死に心のバランスを取った。
ヴァフィラは、そんな彼の気持ちを知ってか知らずか、少しむっとした声で返してきた。
「ずいぶんと余裕だな」
一日千秋の想いで待ちわびていたのに、こんな時にまで冗談しか言えないなんて。
「ヴァフィちゃんは、待ち遠しかった? 俺の事、早く帰ってこないかなぁ、なんて思っててくれた?」
「……別に」
ふい、とそっぽを向いて口をとがらすヴァフィラが、たまらなく可愛い。
あぁ、帰ってきたんだよな、と、ルドーニは改めてヴァフィラを抱く腕に力を込めた。
「またまた~。ヴァフィちゃん、ほんとは俺の事大好きなくせに」
解かっていながら意地を張らせてしまう自分の物言いが、時にはわずらわしかった。
もっとお互い素直になれればいいのに。
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