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第五章・8

「まッまぁ、そうは言っても俺の愛情は、ヴァフィちゃんより広~く深~いけどな!」  必要以上に大きなルドーニの声に、ヴァフィラは不満げな顔をした。  それをきっかけにルドーニはヴァフィラから離れ、そそくさと逃げるように部屋の奥へと歩を進めた。 「ちょいと、ひとっ風呂浴びてくる」  あぁ疲れた疲れた、と歌うように言いながら、ルドーニは浴室へと消えた。  何てことだ、とヴァフィラは頬を膨らませた。   凱旋門で抱き合い、口づけを交わしていた微笑ましい恋人たちの姿。  私だって、あんなことをしてみたかったのに。  だが、それもルドーニといえばルドーニらしい。  いつもと変わらぬ彼の態度に、深い安堵とわずかな不満を持ってヴァフィラはテーブルを整え始めた。

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