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第六章・2

 だがルドーニが離れた時には、もうヴァフィラの腕はベッド横のサイドテーブルに伸びていた。    手に取ったのは、絹のハンカチ。  体液にまみれたルドーニのものを、ていねいに拭き清めていく。    これまで散々遊んできたが、事後にこんな気配りのできる相手に巡り合ったのは初めてだ。  生まれ持った品の良さだな、とルドーニは感じていた。  けれどそれは、これでおしまい、の合図でもある。  主導権を握っているのはルドーニだが、決定権を握っているのはヴァフィラだ。  まだ物足りない、と思っていても、ヴァフィラのNoには逆らえない。  もとより、体力が際立っているわけではない彼だ。  無理強いはできない。  以前、果てたまま気を失ってしまったことのあるヴァフィラ。  それも本人の心に引っかかっているのだろう。  あまり激しいセックスはご法度だ。  ふたり抱き合って眠りについた後、深夜にふと目を覚まして悶々とすることもしばしば。  しかし、ルドーニはその都度煙草などふかして、気を紛らせては我慢することが常だった。  ヴァフィラの体に、心に負担をかけることはできない。  それが愛情のひとつ、とも思っていた。

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