104 / 459
第六章・2
だがルドーニが離れた時には、もうヴァフィラの腕はベッド横のサイドテーブルに伸びていた。
手に取ったのは、絹のハンカチ。
体液にまみれたルドーニのものを、ていねいに拭き清めていく。
これまで散々遊んできたが、事後にこんな気配りのできる相手に巡り合ったのは初めてだ。
生まれ持った品の良さだな、とルドーニは感じていた。
けれどそれは、これでおしまい、の合図でもある。
主導権を握っているのはルドーニだが、決定権を握っているのはヴァフィラだ。
まだ物足りない、と思っていても、ヴァフィラのNoには逆らえない。
もとより、体力が際立っているわけではない彼だ。
無理強いはできない。
以前、果てたまま気を失ってしまったことのあるヴァフィラ。
それも本人の心に引っかかっているのだろう。
あまり激しいセックスはご法度だ。
ふたり抱き合って眠りについた後、深夜にふと目を覚まして悶々とすることもしばしば。
しかし、ルドーニはその都度煙草などふかして、気を紛らせては我慢することが常だった。
ヴァフィラの体に、心に負担をかけることはできない。
それが愛情のひとつ、とも思っていた。
ともだちにシェアしよう!