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第六章・3

「どうした、浮かない顔して」  ルドーニが顔をあげると、そこには武官のグラフコスが立っていた。  差し出されたカップを受け取り、紅茶を一口すする。  ほっと一息。  実にいいやつだ、と思う。  グラフコスは、ルドーニ付きの高等武官だ。  少年時代からよく一緒に悪さをした、気の置けない親友のひとり。  ヴァフィラとの関係を打ち明けている、ただひとりの男でもある。 「ヴァフィラと、うまくいってないのか」  そして、実に勘のいいやつだ、とも思う。  ルドーニは、ため息をついた。  しかしながらグラフコスにとってそれは至極簡単で、考えずとも解かることだった。  いつも自信にあふれ、たとえ苦境に立たされようとも余裕をなくさないルドーニ。  そんな彼が気に病むと言えば、かの麗しの君に関することだけなのだから。

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