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第六章・4

「最近、ご無沙汰なんだよな」  はは、と笑ってグラフコスはルドーニの肩をぽんと打ち、軽口を叩いた。 「ついに破局か。まぁ、お前にしては長く続いた方じゃあないか」  先だっては、セックスが淡白だと嘆いていたルドーニ。  この男が恋人に対する不安を口にしたことに、驚いたばかりだったが。  愛の賛歌を朗々と語っていたかと思えば、翌日にはあっさり別れたなどと言うのが常だった彼の、恋の悩みを聞く日が来ようとは。 「何か怒りを買うようなことは?」 「してない」 「誘ってはいるんだろ?」 「ああ」  だが断られる、と。  断るなら、それなりの理由があるだろう。  グラフコスはヴァフィラのことを、ただわがままを言うだけの人間と思ってはいなかった。

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