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第六章・9
不意打ちの光速拳に、ルドーニは声も立てずに後ろに吹っ飛んで行った。
驚くグラフコスの眼の前に仁王立ちするのは、鬼の形相のヴァフィラ。
「ヴァフィラ!? お前、オーラの方は?」
「おかげさまでな、もうすっかり落ち着いたのだ!」
その馬鹿にも、そう伝えておいてくれ、と捨て台詞を残し、ヴァフィラは早々にその場を走り去った。
ルドーニの馬鹿!
走って走って、それでも走って無茶苦茶に走った。
私などいなくても、替わりはいくらでもいるのだ。
私などいなくても、ルドーニは平気なのだ。
そう思うと、怒りを通り越して哀しくなってきた。
駆け足が、緩む。
やがて、のろのろと歩みを鈍らせ座り込んだ。
あんまりだ。
柔らかな芝を、手でなでた。
そのままゆっくりと横たわり、草の香りを思いきり嗅いだ。
私は、ルドーニの何なのだろう。
ルドーニは、私の何なのだろう。
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