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第六章・10
ルドーニは、私にとってかけがえのない大切な人。
だが、そう思っているのは自分だけで、その思いは実は一方通行なのかもしれない。
「私は、ルドーニの何なのだろう」
口に出して言ってみた。
口に出すと、心で思うより胸が痛んだ。
あぁ、だれか答えてくれ。
ただの玩具だというのなら、はっきりそう宣告してくれ。
そうすれば、諦めもつくのだろうから。
「ヴァフィラは、ルドーニの想い人だ」
男の声に、ヴァフィラは驚いて身を起こした。
そこに立っているのは、息を切らせたグラフコスだった。
「許してくれ。俺があいつのこと誘ったんだ」
気弱な独り言を聞かれたと知って、ヴァフィラは大いに恥じた。
照れ隠しにそっぽを向いたままで、乱暴な言葉が次から次へとこぼれてくる。
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