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第六章・11

「友達を言い訳によこすなんて、卑怯な奴だ」 「誰かさんに殴り飛ばされたショックで、動けないのさ」 「誘われて、のこのこついていく不貞者だ」 「このところ、寂しかったんだ。解かってやってくれ」 「これが初めてじゃあない。以前からの妓館通いは悪癖だ」  そこなんだが、とグラフコスはヴァフィラの隣に腰を下ろした。 「もう少し、ルドーニの気持ちを知ってくれないか。ヴァフィラ」  グラフコス。  ルドーニの親友。  私の知らないルドーニを知っているのか、この男は。  ヴァフィラは、ようやくそちらへ顔を向けた。 「あいつが女と遊ぶのをやめないのは、お前のためでもあるんだよ」  そういえば、先程もそんなことを言っていたような。  ルドーニの女遊びが私のためとは、異なことを。 「方便にしか聞こえんな」 「まぁ、そう言わずに聞いてくれ」  あまり自分の欲望の赴くままにヴァフィラを求めると、その体が心配なのだ、と。  できるだけヴァフィラの意に沿うように抱いて、その心に負担をかけないようにしてやりたいのだ、と。

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