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第六章・12
グラフコスは、以前ルドーニが吐露したつぶやきを、そのままヴァフィラに伝えた。
性欲が高まりすぎてしまうと、知らず知らずのうちにヴァフィラの体や心を傷つけるような抱き方をしてしまうのでは、との恐れ。
そうならないためにも、手に余る精力は他で処理するしかないのだ。
「でも、でもそのことが返って私を苦しめるのだ。私で満足できないというなら、他の誰かと一緒になればいい」
「他の誰かなんて、いないんだよ。誰もお前の代わりになんか、なれないんだよ」
解かってるだろう、とグラフコスはヴァフィラを見つめた。
「あいつは女にだらしないように見えるだろうけど」
まぁ、確かにその通りなんだけど、と笑ってグラフコスは続けた。
「ルドーニは恋をしたことは何度でもあるけれど、愛情にまで深まったのはこれが初めてなんだよ。初めての経験にとまどってるのは、あいつも同じだ」
初めて恋をしたヴァフィラ。
経験豊富なルドーニにどこかで引け目を感じていたが、彼も初めてのものを味わっていたなんて。
この、どうしようもない弱気、弱音。
ルドーニも同じようなことを思っていたなんて。
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