115 / 459

第六章・13

「そういえば、とっておきの弱音があるんだ」 「とっておきの弱音?」 「情けないよ。聞きたい?」  返事を待たずに、グラフコスは誰にも話せないルドーニの秘密を語って聞かせた。 「あいつ、もしお前さんが他の女に惚れたら、ということをすごく心配してる」  相手が男なら、絶対に渡さない。  だが、もし女なら。  ヴァフィラが男として女性を愛し、自分の子孫を残すことを望んだら、その時はもうどうすることもできない。  黙って引き下がるしか道は残されてはいないのだ、とルドーニは恐れていた。  そんな馬鹿な。  見当もつかない。  私が他の男を、女を愛するようになるなんて。  なんて仕方のないことを考えているんだろう。ルドーニは。 「あいつなりに真剣なんだよ、ヴァフィラ。黙って身を引くなんて、ただの恋じゃあできない。本当に相手の幸せを望む、愛情でないとできないことなんだ」  俺が言いたいのはそれだけだ、とグラフコスは立ち上がった。 「ルドーニのやつ、きっとまだあそこにいるぞ。たぶん吹っ飛ばされたまま転がってる」  にこ、と笑うグラフコス。  ヴァフィラも、笑顔を返した。

ともだちにシェアしよう!