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第六章・13
「そういえば、とっておきの弱音があるんだ」
「とっておきの弱音?」
「情けないよ。聞きたい?」
返事を待たずに、グラフコスは誰にも話せないルドーニの秘密を語って聞かせた。
「あいつ、もしお前さんが他の女に惚れたら、ということをすごく心配してる」
相手が男なら、絶対に渡さない。
だが、もし女なら。
ヴァフィラが男として女性を愛し、自分の子孫を残すことを望んだら、その時はもうどうすることもできない。
黙って引き下がるしか道は残されてはいないのだ、とルドーニは恐れていた。
そんな馬鹿な。
見当もつかない。
私が他の男を、女を愛するようになるなんて。
なんて仕方のないことを考えているんだろう。ルドーニは。
「あいつなりに真剣なんだよ、ヴァフィラ。黙って身を引くなんて、ただの恋じゃあできない。本当に相手の幸せを望む、愛情でないとできないことなんだ」
俺が言いたいのはそれだけだ、とグラフコスは立ち上がった。
「ルドーニのやつ、きっとまだあそこにいるぞ。たぶん吹っ飛ばされたまま転がってる」
にこ、と笑うグラフコス。
ヴァフィラも、笑顔を返した。
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