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第六章・14
馬鹿なルドーニ。
これほど馬鹿とは思わなかった。
こんなに途方もない馬鹿を放っておいては、世のためにならないだろう。
「仕方ない。迎えに行ってやるか」
「そうしてやってくれ」
駆けてきた道を、そのままたどりながらヴァフィラは戻った。
怒りにまかせて走った道。
あの時は何も眼にとまらなかったが、今は違う。
木々は、草花は、優しく季節の移ろいを語りかけてきた。
二週間近く、私宅にこもって過ごした。
自らの毒性を、他に振りまくのを恐れて。
ルドーニも、こもっていたのだな、と感じた。
自分だけの、愛情の空回り。
二週間の時は、冬から春へと世界を動かしていた。
ルドーニの冬は、私が春へと変えてあげよう。
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