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第七章 銀の月金の月

 日はすっかり沈み、鮮やかだった夕焼けは西の地平線までその輝きを退いていた。  夜のとばりにその舞台をゆずり、光は柔らかに最後の幕を飾る。  茜色の地平線を覆うように降りてくる、群青色の夜空。  そこには細い細い銀色の月が光っていた。 「ヴァフィラ、君は美しい。あの銀の月のように」  静かにささやくルドーニの声。  顔を上げたヴァフィラの眼に、ルドーニが映る。  そして、その向こうに細く輝く銀の月。  どちらからともなく唇を寄せ、重ねた。  美しい。  以前なら毛嫌いしていた、自分を形容するその言葉。  見た目だけで、簡単に評価されることが嫌だった。  その中に渦巻く猛毒のことなどまるで無視してつむがれる、軽い言葉が嫌だった。

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