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第七章・2

 しかし、今は違う。  深く情を交わし、バラの花の美しさだけでなくその鋭い棘まで全てを愛してくれるルドーニという男が現れてから、かたくなだったヴァフィラの心はずいぶんとほぐれていた。  初対面の相手に美しいと言われても、さほど気にならなくなっていた。  美しいという言葉は、ほめ言葉。  そんな簡単なことに気づかせてくれた、ルドーニ。  彼に美しいとささやかれる事が好きになった。  もっとささやいてほしい、とまで思うようになった。  君は美しい。あの銀の月のように。  細く、冴え冴えと輝く銀の月。  美しさの中に、清廉な鋭さがある。  嬉しかった。  見た目だけでなく、その内面まで美しいと賛美してもらえているようなその言葉に、ヴァフィラは酔った。

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