136 / 459

第七章・4

「ルドーニ、午後は空いているか?」  その言葉の裏には、空いているなら共に過ごそう、こんな響きが隠されていることは彼ならお見通しのはず。  以前なら、一も二もなく空いている、と身を乗り出してくるところだ。  一緒に街へ降りてみようか、などと誘ってくるところだ。  だがしかし。 「あ~、ごめん。今日は、ちょっと……」  歯切れの悪い返事も気にかかる。  ちょっと、何なのだ。 「そうか。ではダメだな」  食い下がるには、プライドの高すぎるヴァフィラ。  ルドーニの態度も不愉快で、さっさとその場を後にする。  慌てたようにかけられる自分を呼び止める声に期待しながらも、そうならない事実に心は乱れる。  ルドーニ、一体どうしてしまったのだ?  これまで感じたことのない、心のざわめき。不安。  だが、それを認めてしまうのも癪で、ヴァフィラはそのまま日々を送っていた。

ともだちにシェアしよう!