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第七章・11
ぐう、とヴァフィラの腹が鳴った。
そういえば、昼食も食べずにルドーニのことをつけていたのだ。
「食べよ。な?」
にこ、と笑うとルドーニは椅子を引いた。
おとなしくそれに掛けるヴァフィラに笑顔を向け、テーブルを整えながらルドーニは彼女についていろいろと語った。
「アンニィはニケア出身の女でな、見たことも聞いたこともない料理をいろいろ知ってるんだよ。だから暇を見つけては教えてもらっていたんだ」
「……恋文をもらっていただろう」
「恋文?」
「私に隠して、なにやら紙切れを見ていた」
「あれはぁ、料理のレシピ。せっかくだから、内緒にしとこうと思って隠してたんだよ」
「何が『せっかく』で、どうして『内緒』なんだ」
だってさぁ、とルドーニは冷たいワインをグラスに注いでヴァフィラに手渡した。
「初めての珍しい料理を、驚いて食べてもらいたいと思ってさ」
その言葉に、ヴァフィラは頬を染めた。
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