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第七章・12

 ルドーニはいつもいろいろと料理を工夫しては、自分にふるまってくれる。  ヴァフィラは料理ができないわけでも苦手なわけでもなかったし、城下には食堂もあってそこへ行けば三食にありつける。  しかしルドーニはよく珍しい料理をこしらえては、ヴァフィラに食べさせていた。  おいしいおいしいと喜ぶその笑顔が見たいから、と手間隙惜しまず料理の腕を振るっていた。 「本日のメインは、魚料理。いい香りだろ?」  じっくりオーブンで焼かれた白身の魚からは、これまで味わったことの無い異国の香りがただよっていた。  一口食べると、鮮烈な辛さが口いっぱいに広がる。  辛い。だが、決してしつこくない上品な味だ。  辛さにも複雑な風味が奥深くからみあっており、さまざまなスパイスが使われていることがうかがえた。 「おいしい」 「ありがとう」

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