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第七章・13

 食べながらルドーニが話すのは、巫女アンニィのことなどではなく終始料理の解説だった。     玉ねぎ、人参、ねぎ、セロリ、ベイリーフ、黒こしょう、スターアニス、ブロッコリーの茎などを入れて煮込み、ベジ・ストックを作ること。  ニンニク、生姜のすりおろし、コリアンダー、クミン、パプリカ、レモン汁、オリーブオイル、塩を混ぜて、シャルモナ・ソースというスパイスペーストを作ること。  塩レモンやドライトマトなども加えて、オーブンで1時間焼き上げること。  聞いているだけで、どれほど手のかかる料理かということが解かる。  ルドーニは、こんなに手間を掛けてこの料理を作ってくれたのだ。  私のために。  魚の身をむしりながら、ヴァフィラは恥ずかしくなった。  私ときたら、そんなルドーニの真心も知らずに身勝手な思い込みを。    素直に謝りたかった。  しかし、いらぬプライドが邪魔をして言葉が出ない。  そんなヴァフィラの心はルドーニには手に取るように解かることなので、ことさら突っ込むようなまねもしなかった。 「ごちそうさま」 「お粗末さまでした♪」  残さず全部食べてくれたことが、何よりの気持ち。  言葉など、いらなかった。

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