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第七章・26
日はすっかり沈み、鮮やかだった夕焼けは西の地平線までその輝きを退いていた。
夜のとばりにその舞台をゆずり、光は柔らかに最後の幕を飾る。
茜色の地平線を覆うように降りてくる、群青色の夜空。
東の空はすでに暗く深く色を染め、そこには円く輝く金色の月が光っていた。
「ヴァフィラ、君は美しい。あの満月のように」
静かにささやくルドーニの声。
顔を上げたヴァフィラの眼に、ルドーニが映る。
そして、その向こうに円く輝く金の月。
「やかましい!」
がつん、と頭突きを喰らい、ルドーニは顎を押さえた。
「何で!? 何で怒るのヴァフィちゃん!?」
「私が太ったと言いたいんだろう! 一体誰のせいだと思っているのだ!」
いや、そんなこと無いって、と慌てて両手をぶんぶんと振るルドーニ。
あれから毎日、異国の珍しい料理をこしらえてはヴァフィラにふるまっていた。
そして、そのあげく……。
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