158 / 459

第七章・26

 日はすっかり沈み、鮮やかだった夕焼けは西の地平線までその輝きを退いていた。  夜のとばりにその舞台をゆずり、光は柔らかに最後の幕を飾る。  茜色の地平線を覆うように降りてくる、群青色の夜空。  東の空はすでに暗く深く色を染め、そこには円く輝く金色の月が光っていた。 「ヴァフィラ、君は美しい。あの満月のように」  静かにささやくルドーニの声。  顔を上げたヴァフィラの眼に、ルドーニが映る。  そして、その向こうに円く輝く金の月。 「やかましい!」  がつん、と頭突きを喰らい、ルドーニは顎を押さえた。 「何で!? 何で怒るのヴァフィちゃん!?」 「私が太ったと言いたいんだろう! 一体誰のせいだと思っているのだ!」  いや、そんなこと無いって、と慌てて両手をぶんぶんと振るルドーニ。    あれから毎日、異国の珍しい料理をこしらえてはヴァフィラにふるまっていた。  そして、そのあげく……。

ともだちにシェアしよう!