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第八章・9
ニコルスは、ルドーニにとっても特別な存在なのだ。
だからこそ、あの男にいらだちを感じる。
ニコルスもどきの出現に、心が乱れた。
今まで付き合ってきた女相手なら、興が覚めるところだ。
あぁ、もうそいつと仲良くやんなと、さっさと別れるところだ。
しかし、ヴァフィラ相手にそういうわけにはいかない。
これが噂に聞く、ヤキモチってぇヤツ?
これまで味わったことのない感情。
ヴァフィラは事あるごとに、お前と出会ってから私は変わってしまったようだと笑ったが、それはルドーニの方も同じだった。
物事に、真摯に向き合うという感情を覚えた。
しかしながら、ヴァフィラに面と向かって『あいつの事、どう思ってんの?』などと尋ねる野暮な真似はできない。
そんな子どもっぽい真似、できやしない。どうしたものか。
答えはひとつ。
あいつなんかより、俺の方がずっとずっとイイ男なんだという事を刷り込むしかない。
普段より少々興奮している自分に気付かないまま、ルドーニは浴室からヴァフィラが出てくるのを待った。
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