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第八章・13

 口づけを交わしながら、ルドーニの指先はまた新しいクリームをすくい、今度はヴァフィラの耳に塗りたくった。  次に何がくるか気づいたヴァフィラは必死で逃れようと暴れだしたが、その足元をひょいと払って食台の上へ抑え込んだ。 「ルドーニ、もう終わりだ。ふざけるのは、あぁッ!」  耳についたクリームを舌先でゆっくり丁寧に舐めとると、ヴァフィラは身をすくめた。  ルドーニの舌先が耳溝を往復し、耳穴の中に潜り込む。  柔らかな耳たぶを吸い、何度も軽く食むとぶるぶると震え始めた。 「んッ、く。んぅう」 「好きだ、ヴァフィラ」  敢えて、そう宣言した。    俺が、お前のことを好いているんだ。  だから、他の男にあんな笑顔を軽々しく見せるのはやめてくれ。  それは、実に身勝手な願いだということは解かっていた。

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