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第九章・3

 そんなある日、ナッカはディフェルに誘われ、城下近辺の集落・オリオ村へ共に出向いていた。 「行商が来ているらしいんだ。何か、おもしろいものが見られるかもしれない」  そう言うディフェルの声は、明るく弾んでいる。 「お前、ホントに新しいものや珍しいものが好きだよなぁ」  少しだけ、揶揄の響きでナッカはディフェルをからかった。  この理知的な、冷静な男がまるで子どものように眼を輝かせている。 (俺と寝る時も、こうだったらいいのにさ)  思いきり、がぶりとリンゴに噛り付いた。  手持ちのリンゴをすべて食べ終わる頃には村へ到着しており、広場へと向かった。

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