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第九章・7
露店の女性は、神秘的な風貌を持っていた。
肌は褐色で、髪は闇のごとく黒い直毛だ。
その瞳も黒曜石のように深く輝き、見つめていると吸い込まれてしまいそうだ。
体には鮮やかな花柄の布を巻いたような、見慣れない服を纏っている。
そんなエキゾチックな女性ではあったが、ナッカは臆することなく気さくに声をかけた。
「お姉さんは、紅茶屋さん?」
まるで少年のようなその問いかけに店主は唇を動かすだけで微笑し、返事と共に小さな磁器のカップを差し出してきた。
「ありがと」
試飲、ということか。
ナッカは、カップに入った美しい飲み物に眼を奪われた。
そして透明感のあるオレンジ色のそれからは、先程感じた鮮烈な香りが立ち昇っている。
これは、この香りはまさか。
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