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第九章・8
「これ、リンゴ? リンゴの匂いだよね!?」
「よくお解かりね。どうぞ試しに飲んでごらんなさいませ」
勧められるまま、飲んでみた。
爽やかな甘さのリンゴの香りが、口いっぱいに花開く。
味わいはすっきりしており、後口もしつこくなくそれでいて旨味が残る。
「美味い……!」
他にもいろいろありましてよ、という女性の説明を聞くと、リンゴだけでなくオレンジやレモンなどの果物はもちろんのこと、ジャスミンなどの花の香り。
さらにはチョコレートのような甘い菓子の香りさえある。
「茶葉に香りを混ぜ込むものもあるけれど、私はこういうものを扱っておりますの」
そう言う女性の手には、小さな茶色の小瓶が。栓を開けると、ぎゅっと凝縮したような強い芳香が感じられた。
「通常の紅茶にこれをお好みの量で垂らせば、お手軽にお好きな香りを楽しめますわ」
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