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第九章・9

 なんてステキなんだ!  こんないいものを扱っている店なのに、自分の他に客がまるでいないことが不思議でたまらない。  ディフェルと一緒に、どの香りを買うか相談したい。  きっと、楽しい時間が味わえるに違いない。  しかし先程の本屋の露店に眼をやると、彼は夢中で本を選んでいる。  とてもあそこから引っ張り出すことはできまい。  仕方がないので、ナッカは自分一人で選ぶことにした。  まずは、大好きなリンゴの香り。  そして珍しいジャスミンやチョコレートの香り。  不思議な南方系のフルーツの香りも選んだ。 「ん~と、後は……」  バラの香り、という商品に惹かれた。  最近ルドーニに出会って話す機会があったが、彼はヴァフィラが忙しくて、このところかまってくれない、と愚痴をこぼしていたっけ。  彼へのお土産に買ってあげようと、バラの小瓶を追加した。

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