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第九章・10
こんなにたくさん買ってくださるなんて、と女性は微笑みながらナッカが選んだ香りを包んでいたが、最後に封をする前に艶然としたまなざしを向けてきた。
「お客様は、恋人がおいででしょう? その方との愛に、満足しているのかしら?」
う、とナッカは一瞬返答に詰まった。
ディフェルとはうまく行っている。
しかし先だっても考えた通り、もっと激しく求めて欲しい、との願望も確かに持っているのだ。
「これは、サービスですわ」
女性は、別の小瓶も一つ包んだ。
「私の国に伝わる、媚薬ですの。紅茶に混ぜれば効きますわ。よかったら、お試しになって」
不思議な香りを持つ紅茶に、謎の媚薬。
一体全体、この女性はどこからやって来た人なのか。
「お姉さんは、どこから来たの?」
カルディアの素朴な疑問に、店主は当たり前のように奇妙な事を答えてきた。
「紅茶の国から参りました。あなたの知らない、遠い世界から」
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