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第九章・20
「このところ働きづめで、くたくただろう? お茶の用意は俺がやってあげるから、のんびり横にでもなってろ」
ルドーニの突然のキスに、フリーズをかけられてしまったヴァフィラ。
頬に残る柔らかな彼の唇の感触を確かめるように、指先を当てた。
なんだか、力が抜けてゆくようだ。
張り詰めていた心が、体がどんどんリラックスしてゆく。
照れて、何も言えないまま、ヴァフィラはすとんと椅子に腰かけた。
台所で、湯を沸かす気配が始まる。
ルドーニが、茶器を準備する音が聞こえる。
「ビスキュイがあったぞ。これも食べよう」
皿に、お菓子を乗せて持ってくるルドーニ。
鼻歌など歌いながら、彼もご機嫌だ。
そんなルドーニの様子に、ヴァフィラもうきうきとお茶の準備を楽しみに待っていた。
私がいて、彼がいる。
あぁ、こんな当たり前の幸せなのに、それを久々に味わうなんて。
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