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第九章・21

 その一方で、ルドーニは湯で温められたカップとソーサーを前に手揉みをした。  さあ、あとはお茶を注ぐだけだ。    そして、くだんの茶色の小瓶をいよいよ取り出した。 「で、ちょいとここで秘伝の香料を」  ナッカからもらった、紅茶にバラの花咲くエッセンス。  事前に栓を開けて匂いを嗅いではいたが、まるでそんな香りはしなかった。    もしかすると、紅茶に入れて初めて匂い出すのかもしれない、とルドーニはヴァフィラの紅茶にそれを少量注いだ。 「ん?」  特段、バラの香りは感じない。  量が少なすぎたのか、と先ほどの倍程度入れてみた。 「……やっぱり、何にも匂わねえ」  俺の鼻が悪いのか?   バラ園担当の、ヴァフィラになら解かるような香りなのか、と感じつつも、ルドーニはトレイに茶器を乗せて恋人の待つリビングへと出て行った。

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