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第九章・23
「ね、香りは? 何か、感じる?」
香り、とは。
いよいよルドーニも紅茶通になってきたものだ。
ヴァフィラは目を閉じ、カップから立ち上る温かな湯気とともにその香りを楽しんだ。
「うん、とてもフレッシュだ。疲れが癒されるよ」
褒めたつもりだったし、本当にそう感じたのでルドーニも嬉しかろうと思ったヴァフィラだったが、彼の表情はやや複雑だった。
「それだけ? バラの香りとか、して来ない?」
「バラの香り……?」
もう一度ヴァフィラは、カップに顔を近づけた。
深く息を吸い、香りを確かめる。
一口含んで、舌で味わってもみた。
だがしかし。
「?」
きょとん、としたヴァフィラの顔つきに、ルドーニは眉をハの字にした。
「ありゃ~? もしかして、失敗?」
「どういうことだ?」
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