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第九章・26
ルドーニの掌が、去ってゆく。
ああ、行かないで。
もっと私に触れていて。
体が火照る。
息が荒くなる。
ヴァフィラの分身は、どんどん硬さを増してゆく。
(まさか。まさか、私は)
ぶるっと震えて、目を堅く閉じた。
そんな、はしたない。
ルドーニと共に過ごすのは、確かに久しぶりだ。
だが、こんなに明るいうちから。
こんなに早々に、彼が欲しくなるなんて!
「ヴァフィラ、大丈夫か?」
覗き込んでくるルドーニの息がかかる。
もう、それだけでぞくぞくしてくる。
「ぅん……、すまない。少し、席をはずしていいか……?」
ふらりと立ち上がったヴァフィラは、浴室の方へ向ってゆく。
そんなに暑いか?
水浴びしたくなるほどに?
不審に思いながらその後ろ姿を見守るルドーニは、ヴァフィラの異常を確かに感じ取っていた。
よろめく足取りで、ふらふらと。
時折壁にもたれて一息ついて、そこで体をややかがめては、また少しずつ歩きだす。
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