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第十章 良薬は口に苦し

 少し早かったかな、と思いつつ、ヴァフィラはルドーニを待った。  早い、といっても約束の時刻の5分前。  待ち合わせに定刻どおりに現れると待っているのはいつもルドーニの方だったので、すぐにやって来るだろうと思って待っていた。  彼はいつも、私を待たせるまいと早目に用意してくる。  そんなルドーニの気遣いを嬉しく感じつつ申し訳ないとも考えていたので、たまには待つものもいい、と思って待っていた。  待っていた。  待っていた。  待っていた。  定刻、の5分後。  彼が遅れるなど珍しいと思い始めた時、頭の中をノックされた。  体の中を走る微量の電流を、つんつん、と弾かれる感覚。  テレパシー通信だ。  ルドーニだろうか、とヴァフィラはすぐに心の掛け金をはずした。  果たして、接触を願ってきたのはルドーニ。  慣れ親しんだオーラが、心の中に遠慮がちに入り込んでくる。 (待たせてごめん。すまないが、今日の予定はキャンセルさせてくれないか?)

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