229 / 459

第十章・3

 悪い予感に胸を痛めながらも、ドアを開けると何でもない顔をしてルドーニがにやけていることを願っていた。  あれ? もしかして、心配してくれた? などと笑いながら。  しかし、私宅のドアをノックしても、名前を呼んでみてもルドーニが出てくる気配はない。  室内に入ると、空気が冷たかった。  今日になってから、暖炉に火を入れた様子がない。  こんなに冷える朝なのに。  やはり寝込んでいるのかと、寝室を開けてみた。  閉められたままのカーテンから薄く光が差し込み、奥のベッドには確かに人が横たわっていた。 「ルドーニ?」  返事がない。  ベッドに近づき、そっと覗き込んでみると、ようやく寝ていたルドーニが身じろぎした。 「あぁ? ヴァフィラ?」 「どうしたのだ、ルドーニ」

ともだちにシェアしよう!