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第十章・4

 怪我をしたのか、と心配そうに髪に手を伸ばしてくるヴァフィラが嬉しかった。  心配して、来てくれたのか。  しかし、いつもの軽口をたたく余裕がなかなか出てこない。  ルドーニは、痛む喉を押してかすれた声を振り絞った。 「ごめん。ちょいと風邪ひいちゃったみたいで。インフルエンザ、ってヤツ? 今、大流行してんだよね」  この冬に猛威を振るっている、流行性感冒。  多数の死者が出ており、サロランニ王国でも警報が発令されている。  あまりにも多い死者の数に、これは闇の力が何か関係しているのでは、とルドーニが外へ様子を探りに出ていたことは知っている。  まさか彼本人までもが、病魔に侵されてしまうことになろうとは。

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