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第十章・6
「やだ。薬はやだ」
せっかく用意した薬を、ルドーニは頑として飲もうとしない。
「これを飲んだら楽になるんだぞ?」
「いーやーだー」
なぜこんなわがままを。
こんな子どもみたいなことを、と思って訊いてみると、その子ども時代にやはり同じように臥せって飲まされた薬が異常にまずかったからだ、という答えが返ってきた。
「飲んで三日経っても舌の上から味が消えねえんだ。師匠のヤツ、あの時俺に一体何を飲ませやがったんだか」
それとは違う薬かもしれないだろう、と言っても口を開けない。
ヴァフィラは困り果ててしまった。
ついには背中を向け、寝具を頭からすっぽり被ってしまうルドーニ。
押しても引いても言う事を聞かない。
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