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第十章・7
まるで北風と太陽だな、とヴァフィラは腰に手を当てた。
北風がいくら強く吹き付けても、マントを押さえて決して脱ごうとしない旅人のようだ。
では、太陽作戦で行くか、とヴァフィラは寝具に腕をもぐりこませた。
冷たいヴァフィラの手が、ルドーニの頬に触れた。
熱のある体にはとても心地よく、ルドーニはつい寝具を抱え込む腕を緩めた。
「あ、気持ちいい……」
「そうか?」
優しいヴァフィラの声。
ついつい顔を出すと、頬の手は額を撫でた。
髪をかき上げ、梳いてくる指先の感触がたまらなく心地いい。
ルドーニはうっとりとその動きに身をゆだねた。
見つめてくるヴァフィラの瞳は、まるで聖母のような慈愛に満ちている。
やがてその美しい顔が近づき、そっと口づけをくれた。
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