250 / 459
第十章・24
そういえば、昨日の具合の悪さはどこへやら。
身も心も、すっかりしゃんとなっている。
「ありがとう、ヴァフィラ。もう、大丈夫だ」
「よかった」
もう一度、口づけあった。
素肌が触れ合い、熱を与えあう。
互いの温度を、確かめあう。
「本当によかった。お前が動けなかったらどうしようかと思っていたのだ」
困ったような顔のヴァフィラは、そのまま困った声で訴えた。
「動けないのだ。その……昨夜、あまり激しかったものだから」
体中が痛く、重だるく、起き上がる気もしない、と。
「さぁ、起きてくれ。そしてまず、暖炉に火を入れてくれ。朝食は、オムレツが食べたいな。その前に、体を拭いてくれ。べたべたなのだ。お前のせいだぞ?」
途端にわがままを言いだすヴァフィラ。
あっけに取られながらも、嬉しかった。
そう、これが日常。
ありふれた、だが大切な毎日。
そんな当たり前のことが、改めて思い出された。
やっぱり、たまには病気になるってぇのもいいもんだ。
ルドーニは、床の中で幸せを噛みしめた。
ともだちにシェアしよう!