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第十一章 バラ色の人生
「あ」
ついルドーニは、そう小さな声を上げていた。
任務を終え、その報告へ法皇の執務室に入った途端、得も言われぬ懐かしい気持ちに襲われたのだ。
どこかで見たことのある光景。
既視感。
いや、確かに執務卓に座る法皇・イジェスの姿は、すでに見慣れたものではある。
現役の大魔闘士として幼い自分を叩き上げていた姿しか知らなかった頃には、このように鎮座したままのお師匠など考えたこともなかったが。
「どうかしたか、ルドーニ?」
「え、あ、いや。何でもねえ」
現実に引き戻されたルドーニは、報告を始めた。
サロランニ王国の息のかかった一つの町にある女神ラニマ像が、何者かによって壊されたのだ。
誰かがいたずらでやったにしては、あまりにも粉々に砕かれていたその有様に、敵国への疑惑が持ち上がった。
敵の魔闘士の仕業ではないか。
到底常人では、ここまで破壊することなど不可能だったからだ。
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