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第十一章・2

「ラニマ像付近や町内、それから町の周辺にも、闇魔法の瘴気は感じられなかった。代わりに何というか、ねぇ。水っぽい感じ」 「水、もしくは氷の魔闘士、か」  サロランニの魔闘士は抜きんでて優秀だが、わが国にも人材は豊富なのだ、と煽りたてようという腹か。 「ご苦労だったな」 「何も。詳しくは報告書読んでくれ。」  話を終えても退出しようとしないルドーニに、イジェスは微笑みかけた。 「多分、これだろう」  腕を伸ばし、執務卓の上に飾られた花瓶の花を手でそっと撫でる。 「あ。あぁ~」  そうか、それだ。  執務卓に花が飾られることは珍しくない。  だが今回は、その花が問題だったのだ。

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