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第十一章・3

 オレンジ色に輝く、大輪のバラの花々。 「懐かしいだろう? オレンジ色のバラ」   いつもやってくる花売りが、珍しいバラが手に入ったと置いていったというそのオレンジ色のバラは、かつてイジェスとルドーニの二人の眼を楽しませていたものでもあった。  ルドーニの神殿が、まだイジェスの住まいだった頃。  二人で住まうそこに、こんなバラが飾られることがしばしばあった。  お師匠・イジェスと、オレンジ色のバラの取り合わせ。  これが、既視感の元だったのだ。  昔を懐かしく噛みしめながら、ルドーニは退出した。

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