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第十一章・7
「神殿の守護者としての勤めを行っているだけだ」
「でも、ニコルスはバラを愛して……」
「先生の話はやめてくれ」
怒りに任せて大声を上げるでもなく、苦しげにようやく搾り出されたヴァフィラの声に、ルドーニは後悔した。
ここまで苦しめるつもりはなかったが、やはりヴァフィラにとってニコルスはまだ慙愧の対象なのだ。
「ごめんな。そんなつもりじゃなかった」
「いや……私こそ、すまない」
謝られれば、なおのこと心が咎められる。
不用意にヴァフィラを傷つけた自分が、情けない。
すっかり解かり合えているつもりだったが、ヴァフィラの心の奥にはまだまだ踏み込めない部分があるのだ。
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